近年、歯周病と様々な全身疾患との関連が明らかになってきました。一方で「歯がない人は
認知症になりやすい」ともいわれます。それは本当なのか、入れ歯を入れれば大丈夫なのか、ご説明します。
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噛むことと認知症の間に関係があるのは噛むことで脳が刺激されるから
歯と脳は神経でつながっており、噛むことによって、脳の神経ネットワークが刺激されます。噛むことと認知症が関係があるといわれるのは、そのためです。私たちは自分では意識していませんが、噛むことで脳に刺激を与え続けています。
一方、歯がなくて噛めない状態の方は、脳に噛むことによる刺激を与えることが出来ません。噛むという動作を行わないと、唾液も出にくくなってしまいます。日ごろから硬いものも噛んで食べている方は、唾液が良く出ますので、歯周病になりにくく、高齢になっても歯が残っている割合が高いです。
インプラントで奥歯を補うことがアルツハイマー病の防止になる
雑誌マネーポスト2008年3月号に掲載された、名古屋大学大学院医学系研究科教授で再生医療の第一人者の上田実教授が雑誌に寄せられたコメントがあります。
「アルツハイマー病を防止するには、よく噛むことが必要になるが、入れ歯では噛む力が不足して、神経の萎縮は止められない。一方、インプラントであれば、天然歯に近い噛む力が確保できるので、神経の萎縮を防げる」
失った歯を入れ歯で補ったとしても、噛む力が弱く、脳の神経への刺激が充分でないと、上田教授は指摘しておられます。しかし「インプラントでないとダメなのか。入れ歯では認知症になってしまうのか」と決めつけるのは早計です。
入れ歯にも様々な材質や形態があり、実際に不自由なく良く噛めている方もおられます。要は、「日常的に硬いものを噛むように心がけること」であり、いくらインプラントを入れて
しっかり噛めるようになっていても、軟らかいものばかりを好んで食べている方は脳への刺激が弱いということです。
歯がほとんどなくて噛めない方は要注意
日本人の成人が歯を失う原因のほとんどは歯周病です。シニアの方で、「年をとったら歯がなくなるのは仕方がない」と思っておられる方は、案外多くおられるかもしれません。
しかし、歯がなくなるのは人が生きていくうえで大変危険なことです。なくなった歯をブリッジや入れ歯やインプラントで補って噛めるようになった方は、まだ大丈夫です。
一番の問題は、「歯がほとんどないのに噛めるように治療をしていない方」です。噛めないのでやわらかいものを飲み込むようにして食べている方は、実は認知症になりやすいという調査結果があります。
ガムを噛むと脳の血流量が増えるという実験結果
厚生労働省の調査によると、65歳以上で自分の歯がほとんどなく、しかも入れ歯を使っていない人は、20本以上歯が残っている人と比べて、認知症になり介護が必要になる可能性が1.9倍高くなると報告されています。
その理由としては、歯がほとんどないのに入れ歯を使っていなくて、日常的に噛めない生活を送っているからだと考えられています。日本チューインガム協会が行った実験によると、ガムを噛むことで脳の血流が良くなるという実験結果が報告されています。
この実験では、20歳〜85歳までの30人にガムを噛んでもらい、噛む前と後の脳内の血流の変化をMRIで調べました。その結果、大脳の運動感覚野という場所の血流量が、ガムを噛むことで20〜40%も増加するという結果が得られました。
血流量の増加はすべての被験者に見られました。また大脳のその他の場所や小脳でも血流量の増加が見られたということです。しかし、虫歯予防の観点から、お勧めできるガムとお勧めできないガムがあります。
おすすめ出来るガム
① キシリトール
白樺や樫の木などを原料としてつくられる天然素材の甘味料。むし歯予防にはキシリトール含有率が90%以上の歯科医専用のキシリトールガムが効果的です。
② リカルデント(CPP-ACP)
牛乳の蛋白質からつくられています。歯のエナメル質の再石灰化を助けます。
③ ポスカム(POs-Ca/リン酸化オリゴ糖カルシウム)
ジャガイモを原料とするオリゴ糖でつくられています。
④ L.ロイテリ菌
人由来の乳酸菌。むし歯や歯周病の原因菌を減らす効果があるとされています。
おすすめ出来ないガム
× 糖類を含むもの
糖類ゼロgのものを選びましょう。甘味料としては、キシリトール、ソルビトール、マルチトールなどがお勧めです。
× 酸性物を含むもの
クエン酸や果汁入りなどの、それ自体が酸性のものは避けましょう。酸性度にもよりますが、歯のエナメル質が溶け出す可能性があります。ガムを購入される際は、パッケージをよく見て含まれている内容物を調べてから選びましょう。
歯のない人は認知症になりやすいのかに関するQ&A
歯のない人は認知症になりやすい傾向があります。厚生労働省の調査によると、65歳以上で自分の歯がほとんどなく、入れ歯を使っていない人は、20本以上歯が残っている人と比べて、認知症になる可能性が1.9倍高くなると報告されています。歯がなくなると噛む力が低下し、日常的に噛む刺激が不足するため、脳への刺激が弱くなります。
歯がほとんどなくて噛めない方は要注意です。噛むことで脳が刺激され、脳の神経ネットワークが活性化されます。しかし、噛むことができないと唾液の分泌も減り、脳への刺激が不足します。この状態が長く続くと認知症になりやすいと考えられています。
ガムを噛むことによって、唾液の分泌が増えるため、虫歯予防に役立ちます。ただし、お勧めできるガムはキシリトールやソルビトールなどの糖類ゼロのものであり、酸性物を含むものは避けるべきです。これらのガムを噛むことで、虫歯予防効果を期待することができます。
まとめ
このように、噛むことと認知症の間には関連性があることがわかりました。認知症が進行したり、ものを飲み込む嚥下機能が低下してくる前に、しっかり噛める状態を維持して予防につとめましょう。