インプラントはどれくらいもつのでしょう?、半永久的にもつものなのか、それとも入れ歯などのように作り直しが必要なのかと疑問を持つ方も多いと思います。インプラントは他の歯科治療に比べてお金がかかるので、どのくらい長く持つのか気になるのは当然のことだと思います。
目次
インプラントの寿命の一般的な目安
インプラント(人工歯根)はチタンで作られているため、インプラントそのものの寿命は半永久的と言えます。しかし人間の歯として機能的に半永久的に安定して噛めるわけではありません。
インプラントの平均寿命は、「10~15年くらい」だとも言われています。ただし、インプラントを埋入した部位や条件によっても異なりますので、すべての方のインプラント寿命が10年以上になるわけではありませんし、逆に20年以上問題なく使い続けている方もおられます。しかしメンテナンスなどのお手入れを怠ると、インプラントの寿命は短くなる可能性があることを知っておきましょう。
入れ歯の寿命は平均5年、ブリッジは平均8~9年といわれていますので、入れ歯やブリッジと比較してもインプラントの方が長持ちするといえます。
インプラントの寿命に影響する要因は?
1.予防メンテナンスをしっかり行っているか?
歯周病は歯の周りの歯槽骨を溶かしていく病気です。実はインプラントの周囲の歯肉や骨も歯周病になるのです。インプラントが歯周病になることをインプラント周囲炎といいます。
歯周病菌から歯周組織を守ることがインプラントだけではなく天然歯も守ることに繋がります。周囲炎の予防のためには、毎日の歯磨きなどのセルフケアがとても重要です。同時に、プロによるメンテナンスを受けることも重要です。
歯ブラシでは取れないインプラントと隣の歯の間や、インプラントと歯茎の間の歯垢や汚れをきれいにし、お口の中から歯周病の原因となる細菌を減らします。歯周病のリスクを減らすことで、インプラントは長もちします。
2.医療機関や担当医を慎重に選んでいるか?
①設備や設備や設備や機材が充実している
滅菌の設備が整っており、衛生面や感染予防に力を入れているかが重要なポイントになります。
②信頼できるメーカーの製品を採用している
世界的にシェアが高く、形状が優れていて、高い強度があり、安全性と信頼性の高いインプラントを選び使用しているかが重要です。そのためには費用が激安のものは避けて頂いた方が長く持たせることにつながるといえます。
③担当医に十分な知識と経験がある
インプラントを長もちさせる要因として、手術の担当医に十分な技術があり、人工歯根が適切な位置に埋入されているかが重要になってきます。
実際に埋入位置が悪いと上部構造の形態や歯周組織にも悪い影響が出る可能性があります。
3.きちんとした咬み合わせで咬ませているか?
インプラントは、見た目の美しさを追求するだけでなく、咬み合わせのバランスが良いかどうかがとても重要です。歯が抜けてしまって前歯だけとか奥歯のみでしか噛めなかった方が、治療後は口の中全体でバランス良く噛めるようになることによって咬合力がうまく分散され、その結果、他の歯も長持ちします。
天然の歯に大きな負担がかからないように、インプラントの歯でもしっかりと咬ませることが重要です。
4.歯ぎしりや食いしばりから守るためのマウスピースを使用しているか?
歯を失う原因の多くは、歯周病と食いしばりや歯ぎしりなどと言われています。歯ぎしりや食いしばりが強い方は、歯を支えている骨に必要以上の負荷をかけてしまいますので、せっかく治療を行っても、上部構造が欠けたり、人工歯根がグラグラしたりといった問題が起こることが考えられます。
そのため、歯ぎしりや噛みしめ、食いしばりが強い方は、ナイトガードと呼ばれるマウスピースを夜間だけつけて歯を傷めないように対策します。歯ぎしりや食いしばりは無意識に行っていることが多いため、出来る限り上下の歯を離しておいたり、精神的に集中が必要な作業をするときにはマウスピースをつけるなど、なるべく癖を治すように気をつけるようにしましょう。
5.全身の健康管理はできているか?
糖尿病や喫煙、骨粗しょう症など、免疫力を低下させ歯周病を悪化させる原因となりますので、全身の健康管理はインプラントの寿命に大きく関わってきます。禁煙して頂くことで寿命が延びる可能性があります。
インプラントの構造と耐久性
インプラントは、チタンなどの非常に強固な金属で作られており、生体との適合性が高いため、長期間にわたり耐久性を保つことができます。特に、骨としっかりと結合するオッセオインテグレーションが成功することで、インプラントの寿命が飛躍的に向上します。
主な構造要素
– チタン製のインプラント体を使用する
– 骨とインプラントがしっかりと結合する
– 被せ物(クラウン)の耐久性
オッセオインテグレーションが成功すれば、インプラントは非常に強固に骨と結びつき、自然な歯とほぼ同じような強度を持つことができます。
メンテナンスがインプラントの寿命に与える影響
インプラントの寿命を延ばすためには、定期的な健診と毎日のデンタルケアが欠かせません。特に、インプラントの周囲に歯垢が溜まると歯周病が進行し、インプラントがぐらつきを起こすことがあります。そのため、正しい歯磨きと歯垢の除去は非常に重要です。
インプラントのメンテナンスに必要なポイント
- 毎日の歯磨きで歯垢をしっかり取り除く
- フロスや歯間ブラシを使った清掃
- 歯科医院での定期的なクリーニング
また、患者さんご自身が口腔内の状態を定期的に確認し、違和感を感じた場合は早めに歯科医を訪れることが重要です。
インプラントの寿命は上顎と下顎で違う?
顎の骨の密度は、上顎と下顎によってそれぞれ違うために生存率の違いが生じてしまいます。それぞれ比べると、上顎の骨の方が下顎よりも密度が低いのです。
結合には密度も関係していて、ある程度高い方が骨と人工歯根が結合しやすくなります。そのため、下顎の生存率が少しだけ高くなります。10~15 年の累積生存率では4~5%程度の違いになります。
インプラントの寿命を縮めるリスク要因
インプラントの寿命を縮める要因には、いくつかの健康リスクがあります。不正咬合や噛み合わせの問題がある場合、インプラントにかかる力が不均一になり、早期に破損することがあります。また、喫煙や糖尿病などの健康状態がインプラントの寿命に悪影響を及ぼすことがあります。
寿命を縮める主なリスク
- 不正咬合や噛み合わせの不具合
- 喫煙による血流の低下
- 糖尿病による治癒遅延
- 定期的な健診を怠ること
これらのリスクを避けることで、インプラントの寿命を延ばすことが可能です。
インプラントを長持ちさせるポイント
インプラントの手術を受けて一番大事な時期は、埋入直後から3ヶ月になります。この時期の骨と人工歯根の結合状態がとても重要になってきます。
骨とチタン製の人工歯根がしっかりと結合した部分(面積)が最大になるのは、埋入から3ヶ月のこの時期です。それ以上、結合した部分(面積)が広がることはなく、その後は現状維持を保つか緩やかに減少していきます。
インプラントの生存率が最も低いのは、最初の1年間です。この期間は、特に注意を払って頂きながら乗り越える事が重要です。
インプラントを長く使い続けるためには、毎日のメンテナンスが欠かせません。正しい歯磨きやフロスの使用はもちろん、食生活やライフスタイルにも注意が必要です。特に硬い食べ物や噛む力が強くかかる食べ物を避けることは重要です。
具体的な対策
- ソフトブラシで優しく歯磨きする
- フロスや歯間ブラシを使って、インプラント周囲を清潔に保つ
- 毎年の健診でインプラントの状態を確認する
- 硬い食べ物を避け、インプラントに過度な負担をかけない
患者さんが日常的にこれらのケアを実践することで、インプラントは長く健康に保たれます。
インプラントの維持に必要なこと
まずは、毎日の丁寧なセルフケアがとても重要です。歯垢や歯石をためないことが、インプラントの寿命を延ばすだけではなく、口腔内の虫歯や歯周病予防にも効果的です。
また自分で日常的にできるケアの他に、歯科医師による検診と歯科衛生士による歯のクリーニンを定期的に受けていただく事が必要です。
まとめ
インプラントの寿命は、治療の精度や治療後のメンテナンスが大きく影響しています。質の高い治療を受けたとしても、その後のメンテナンスが不十分であれば、長持ちさせることはできません。
インプラントを長持ちさせるためには、毎日のセルフケアがとても大切です。しかしそれだけでは完全ではないので、磨き残しはないか、お口の中でトラブルは起きていないかなど、歯科医院での定期健診を受けていただくようおすすめします。
定期健診をすることにより、咬み合わせの調整や歯ぎしりや食いしばりなどの癖はないかなど、インプラントに大きな負担を与えていないかチェックすることができます。定期的なチェックを受け、常に最適な対処を行うことでインプラントの寿命を延ばし、長持ちさせることができます。