インプラント

インプラント治療には骨密度が重要

インプラント治療には骨密度が重要

骨密度はインプラントの成功に大きく関わる重要な要素で、治療を検討されている方の中には、ご自身の骨密度を気にされている方もおられます。インプラント治療と骨密度の関係、骨密度が低い場合の対策、そして治療後のケアについてご説明します。

インプラント治療とは

インプラント治療は、失った歯の機能と見た目を回復するための方法の一つです。具体的には、人工の歯根(インプラント体)を顎の骨に埋め込み、その上に人工の歯(被せ物)を装着します。これにより、天然の歯とほとんど変わらない噛み心地や見た目を得ることができます。

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骨密度とは何か

骨密度とは、骨の強度や密度を示す指標で、骨に含まれるミネラル(主にカルシウム)の量を測定したものです。骨密度が高いほど骨は強く、逆に低いと骨がもろくなり、骨折しやすくなります。特に女性は、閉経後に骨密度が低下しやすく、骨粗しょう症のリスクが高まります。

骨密度

また、骨密度は年齢とともに変化し、一般的に30代をピークに徐々に低下していきます。特に以下のような要因が骨密度の低下に影響を与えます。

  • 加齢・・年齢が上がるにつれて、骨の新陳代謝が遅くなり、骨量が減少しやすくなります。
  • カルシウム不足・・骨の主要な構成要素であるカルシウムの摂取が不足すると、骨密度が低下します。
  • 運動不足・・適度な運動は骨への刺激を促し、骨密度を維持するのに重要な役割を果たします。
  • 喫煙・過度な飲酒・・喫煙や過度な飲酒は骨の健康を損ない、骨密度を低下させる原因となります。
  • ホルモンバランスの変化・・女性の場合、閉経によるエストロゲンの減少が骨密度低下を引き起こします。

これらの要因によって骨密度が低下すると、顎の骨が十分な強度を持たず、インプラント治療に影響を及ぼす可能性があります。特に、骨密度が極端に低い場合は、インプラント体を支える力が不足し、治療の成功率が低くなるリスクが高まります。

インプラント治療における骨密度の役割

インプラント体を顎の骨にしっかりと固定するためには、十分な骨密度が必要です。骨密度が低いと、インプラント体と骨の結合(オッセオインテグレーション)が不十分となり、インプラントの安定性が損なわれる可能性があります。その結果、インプラントの脱落や周囲の組織の炎症(インプラント周囲炎)などのリスクが高まります。

また、骨密度が十分でない場合、以下のような問題が発生することがあります。

1. インプラントの固定が不十分

骨の密度が低いと、インプラント体が十分に固定されず、ぐらつきやすくなります。そのため、治療が推奨されないことがあります。

2. 治癒に時間がかかる

通常、インプラントが骨と結合するまで数ヶ月かかりますが、骨密度が低いとさらに時間が必要になることがあります。

3. インプラント周囲炎のリスクが高まる

骨密度が低いと、インプラント周囲の組織が炎症を起こしやすくなる場合があります。これにより、インプラントの安定性が損なわれる可能性があります。

4. 骨吸収の進行

骨密度が低い場合、インプラントを埋入した後も骨の吸収が進みやすく、長期的な安定性が損なわれて、数年でグラグラしてくる可能性があります。

このように、骨密度はインプラント治療の成功や寿命に大きく関わるため、事前に骨の状態をしっかりと評価し、必要に応じて骨造成手術や生活習慣の改善を検討することが大切です。

骨密度が低い場合の対策

骨密度が低い場合でも、以下の対策を行うことでインプラント治療を成功させることが可能ですので、担当医と相談しながら最適な方法を検討しましょう。

骨造成手術の検討

骨量が不足している場合、骨を増やすための手術(骨造成)を行うことがあります。これにより、インプラント体を支える十分な骨を確保できます。骨造成手術にはいくつかの方法があり、患者さんの骨の状態や必要な骨量に応じて適切な手術方法が選択されます。

GBR(骨誘導再生法)

GBR(Guided Bone Regeneration:骨誘導再生法)は、インプラント周囲の骨が不足している場合に適用される手術です。骨が不足している部分に人工膜(メンブレン)を設置し、その下に骨補填材を充填することで新たな骨の再生を促します。

  • 適用ケース・・歯周病などで骨が大きく吸収してしまった場合や、インプラント埋入時に骨が十分でない場合に適しています。
  • 治療の流れ・・骨補填材を適切な部位に配置し、人工膜で覆うことで、骨の再生を促進します。骨が再生し十分な厚みが確保された後に、インプラントを埋入します。
  • メリット・・比較的低侵襲でありながらも、インプラントの長期的な安定性を向上させることができます。

サイナスリフト(上顎洞挙上術)

上顎の骨が不足している場合、上顎洞(サイナス)に骨補填材を挿入し、骨の厚みを増す手術です。上顎の奥歯部分の骨が不足しているケースでよく用いられます。サイナスリフトには、大きく分けて「ラテラルアプローチ(側方アプローチ)」と「クレスタルアプローチ(垂直アプローチ)」の2種類があります。

ソケットリフト

サイナスリフトと同様に上顎の骨を増やす手術ですが、比較的小規模で低侵襲な方法です。上顎洞の底を持ち上げながら、インプラントを埋入するための穴から直接骨補填材を挿入し、骨の高さを確保します。主に骨の不足量が5mm未満の場合に適用されることが多く、通常のサイナスリフトに比べて患者さんへの負担が少ないのがメリットです。

自家骨移植

自身の骨を採取し、不足している部分に移植する方法です。下顎の骨や腸骨から採取することが一般的ですが、骨の生着が良く、しっかりとした骨を確保できるため、成功率の高い治療法とされています。

人工骨移植

自家骨の代わりに、人工の骨補填材を使用する方法です。感染リスクが低く、比較的負担が少ないため、多くの症例で採用されています。

骨造成手術は、インプラントを安定させるために非常に重要な治療の一つです。手術後の適切なケアを行い、歯科医師と相談しながら治療を進めることで、安全にインプラントを埋入できる環境を整えることができます。

適切な食生活の維持

カルシウムやビタミンDを豊富に含む食品を摂取することで、骨密度の維持・向上が期待できます。乳製品、魚、緑黄色野菜などを積極的に取り入れましょう。

定期的な運動

ウォーキングや軽い筋力トレーニングなどの適度な運動は、骨密度の維持に効果的です。日常生活に取り入れることで、骨の健康をサポートします。

禁煙の推奨

喫煙は骨密度の低下を促進するため、インプラント治療を検討されている方は禁煙を心掛けることが望ましいです。

治療後のケアと骨密度維持の方法

インプラント治療後も、骨密度を維持し、インプラントの長期的な成功を確保するためのケアが重要です。

定期的な歯科健診

歯科医師による定期的なチェックを受け、インプラントや周囲の組織の状態を確認しましょう。早期発見・早期対応がトラブルの予防につながります。

適切な口腔衛生の維持

毎日の歯磨きを丁寧に行い、インプラント周囲に歯垢が溜まらないようにしましょう。必要に応じてデンタルフロスや歯間ブラシを使用することも効果的です。

栄養バランスの取れた食事

引き続き、骨の健康をサポートする栄養素をバランスよく摂取することが大切です。

適度な運動の継続

治療後も定期的な運動を続け、骨密度の維持と全身の健康増進を図りましょう。

まとめ

インプラント治療において、骨密度は成功の鍵を握る重要な要素です。骨密度が低い場合でも、適切な対策と日常生活での工夫により、インプラント治療を成功させることが可能です。

骨密度が低いと、インプラントの安定性に影響を与える可能性があるため、事前に骨の状態を確認することが大切です。

骨密度が低い場合でも、骨造成手術や適切な生活習慣の改善によって、インプラント治療を成功に導くことができます。

治療後も、適切な食生活や運動習慣を継続し、骨密度の維持に努めることが重要です。

このように、骨密度の管理はインプラント治療の成功と長期的な安定性に深く関わっています。

また、「骨密度が低い」「骨が足りない」という場合も、適切に骨を増やす処置を行うことで、治療を受けられるようになる方が多くおられます。特に上顎のインプラントでは、増骨の処置を行うのはそれほど珍しいケースではありません。

ご自身の骨の健康を意識し、歯科医師と密に連携しながら、最適な治療計画を立てていきましょう。

この記事の監修者
医療法人真摯会 梅田茶屋町クローバー歯科・矯正歯科
院長 竹田 亮

2007年 国立長崎大学歯学部卒業。

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梅田茶屋町クローバー歯科・矯正歯科

大阪矯正歯科グループ大阪インプラント総合クリニック