インプラントは歯を失ったときに見た目と機能を回復するための治療法の一つですが、差し歯との違いはあまり知られていないことが多く、疑問に思われる患者さんもおられることと思います。インプラントと差し歯の違いをご説明します。
インプラントとは?
インプラントは、人工歯根を顎の骨に埋め込み、その上に人工の歯を装着する治療法です。
構造
- 人工歯根(チタン製が一般的)・・顎の骨と結合し、安定した土台となります。
- アバットメント・・人工歯根と被せ物をつなぐ役割を果たします。
- 上部構造(被せ物)・・天然の歯に近い見た目と機能を持つ部分です。
治療の流れ
- 外科手術・・顎の骨に人工歯根を埋め込みます。手術時間は約1~2時間です。
- 結合期間・・骨と人工歯根がしっかり結合するのを待ちます(通常3~6ヶ月程度)。
- 最終装着・・アバットメントと上部構造を取り付け、完成となります。
特徴
長期的な安定性
- 適切なケアを行えば10年以上の寿命が期待できるため、長期的に信頼できる治療法です。
- 天然歯と同じように強い力で噛むことが可能で、硬い食べ物も楽しむことができます。
- 外科的な手術を伴いますが、完成後は違和感が少なく自然な感じになります。
周囲の歯を保護
- インプラントは他の歯を削る必要がないため、健康な歯を守りながら治療が行えます。
- 周囲の歯に負担をかけず、自立した構造を持つため、歯列全体のバランスが保たれます。
- 特に部分欠損の場合、隣の歯を犠牲にしない点が大きな利点です。
自然な外見と機能
- インプラントの被せ物は天然の歯に非常に近い色や形状で作られるため、見た目にも違和感がありません。
- 食事や会話中にも、他人に気付かれる心配がなく、心理的な安心感を得られます。
- 構造的にも天然歯に近い感覚を提供するため、日常生活でのストレスを軽減します。
インプラントは、自立した治療法であり、周囲の歯への影響が少ないのが魅力です。
差し歯とは?
差し歯は、歯の根が残っている場合に、その根を利用して被せ物を装着する治療法です。抜歯後は差し歯が出来ません。
構造
- 歯根・・患者さんの天然の歯根を利用します。
- 支台築造(コア)・・歯根に補強材を加え、被せ物を装着できるようにします。
- 被せ物・・外見を整える人工の歯です。
治療の流れ
- 歯根の保存・・健康な歯根を残し、清掃や強化を行います。
- 支台築造の設置・・歯根に補強材を装着し、土台を作ります。
- 被せ物の装着・・天然歯に近い見た目と機能を持つ被せ物を装着します。
特徴
- 保存可能な歯根を活用・・天然の歯根を利用するため、患者さん自身の歯の感覚を残すことができます。
- 比較的短期間での治療・・治療期間は数週間程度で済む場合があります。
- 制約・・歯根が健康でなければ治療できない場合があります。
差し歯は、比較的簡単に治療ができることが多く、患者さんの負担が軽減される利点があります。
インプラントと差し歯の主な違い
項目 | インプラント | 差し歯 |
使用する歯根 | 人工歯根(チタン製) | 天然歯根 |
周囲の歯への影響 | 他の歯を削る必要がない | 周囲の歯を削る必要があることも |
寿命 | 長期的に安定して使用可能 | 歯根の状態次第で制限あり |
見た目と機能 | 天然歯に非常に近い | 見た目は自然だが耐久性に差あり |
費用 | 高額 | 比較的安価 |
治療を選ぶ際のポイント
インプラントと差し歯のどちらを選ぶべきかは、患者さんの口腔状況やライフスタイル、費用の制約によります。
インプラントを選ぶべきケース
周囲の歯を守りたい場合
- インプラントは独立した構造を持つため、隣の歯を削る必要がありません。
- 天然歯を削らずに治療できるため、健康な歯を長期間保つことができます。
長期間の安定性を重視
- 適切なケアを行えば10年以上の寿命が期待でき、長期的な費用対効果が高いです。
- 耐久性が高いため、日常的な使用で不安が少なくなります。
健康な顎の骨がある場合
- 顎の骨が十分にある患者さんであれば、人工歯根がしっかりと固定され、安定した治療結果が得られます。
- 骨量が少ない場合でも骨造成手術を併用することで対応可能です。
差し歯を選ぶべきケース
歯根が健康で保存可能
- 歯根がしっかりしている場合、差し歯を利用することで天然歯根を活かすことができます。
- 歯根の感覚を残すため、噛み心地や違和感が少なくなります。
費用を抑えたい場合
- 差し歯はインプラントに比べて治療費用が抑えられるため、経済的な選択肢です。
- 手術が不要なため、費用だけでなく治療時間や身体的負担も軽減されます。
簡単な治療を希望
- 差し歯は治療の流れがシンプルで、外科的な手術を伴わないため、短期間で完了するケースが多いです。
- 歯科治療に対する不安が強い患者さんにとって負担が少ない方法です。
治療法の選択は、歯科医師との十分な相談が重要です。
治療後のケアの違い
ケアの方法にどのような違いがあるのかをご説明します。
インプラントのケア
- 歯磨きの徹底・・インプラント周囲炎を防ぐために、特に歯垢の除去を意識します。
- 定期的な健診・・歯科医師による定期的な健診で状態を確認します。
- 専用アイテムの使用・・インプラント専用の歯磨き粉やデンタルフロスを使うことで清潔に保てます。
差し歯のケア
- 歯垢の除去・・被せ物周囲に歯垢がたまりやすいため、丁寧に歯磨きを行います。
- 健診の継続・・定期的に歯科医師の診察を受け、被せ物や歯根の状態を確認します。
どちらの治療法でも、日常的なケアを丁寧に行ることが長持ちさせるためのポイントとなります。
まとめ
インプラントと差し歯には、それぞれに特有の使用すべきケースと利点があります。患者さんのニーズやお口の状態に合わせて、最適な治療法を選ぶことが重要です。歯科医師との十分な相談と適切なアフターケアを行うことで、長く快適な生活を送ることができます。