大人になって親知らずが生えてくると「親知らずは抜いたほうがいいのかな?」と不安になる方が多いようです。歯科では抜歯する時には理由もなく歯を抜くことはありませんが、親知らずの場合はどうなのかご説明します。
目次
親知らずは抜くべき?
抜いた方がよいかどうかは、歯科医師によって様々な見解があり、判断が分かれるところです。どのような状態なのかによって、抜いた方が良いのか抜く必要がないのか、リスクの有無が違ってきます。
正常な状態で生えてきたとき→抜かなくてもいい
親知らずは一番奥の歯で、正常な状態で生えてきて奥歯として十分に機能しているとしても、歯磨きの時に歯ブラシが届きにくく歯垢が残りやすい場所であるため、虫歯や歯周病に感染する確率が高いです。
一般的に親知らずは、正しい位置に完全にまっすぐ生えていて上下がしっかりと噛んでいる場合は問題がないと考えられますので、抜かなくても良いです。
また、親知らずの手前の7番の大臼歯は虫歯になりやすく、シニアになったころには抜歯になってしまう方も大勢おられます。その場合に健康な親知らずがあれば、ブリッジの支台歯として使うことも可能です。
ただし、しっかりと磨けないのであれば、いずれ虫歯や歯周病で抜かなくてはならなくなるかも知れません。
正常に生えていないとき→抜く場合が多い
それでは、正常に生えていない親知らずの場合はどうなのでしょうか。正常に生えていないとは、生える位置が悪く、斜めに生えていたり、横を向いていたり、生えてくるために隣にある7番の大臼歯をぐいぐい押していて大きな腫れや痛みのある状態のような場合のことをいいます。
7番の歯を押している場合は、手前の歯に炎症が起きたり、炎症がひどくなって膿がたまったり、歯並びに影響を与えたり手前の歯に虫歯を作ってしまうことがありますので、親知らずがこれらの症状の原因となっている場合は早めの処置が必要です。
このような状態は、シニアになってから起こることもあります。若いうちに抜歯すると、親知らずの歯根と骨の間に隙間があって抜歯しやすいのですが、シニアになってからの抜歯は神経損傷を起こす可能性があって抜歯が難しいだけでなく、抜歯後も治りにくいという問題があります。
このような理由で若いうちに必ず抜いてしまった方が良いという見解の歯科医師もおられます。
親知らずを抜くのはどんな場合?
親知らずが生えてきたからといって、すぐに抜歯になるわけではありませんが、以下のような場合には抜歯の対象となる場合があります。
- 周囲の歯茎が腫れ痛みが続いている
- 手前の歯が虫歯になった
- 歯茎に埋まっている状態だがレントゲンで周りに膿があるのが見える
- 生えてきた位置が歯並びに悪影響を与える
親知らずを抜かなくていいのはどんな場合?
親知らずは抜かなくても良い場合もあります。以下のような場合です。
- 真っ直ぐにきれいに生えてきた場合
- 歯茎の上に一部だけ出ている状態で、問題がなく生えている場合
- 完全に骨の中に埋まっていて、今後も問題が起こらないと考えられる場合
- 歯の移植に利用できる場合
- 将来、ブリッジの支台として利用出来そうな場合
親知らずとは?
親知らずとは、前歯から数えて8番目に生えてくる一番奥の歯のことです。智歯とも呼ばれています。他の永久歯とは違って成人してから生えてくることが多いため、昔は人の寿命が短かったので親知らずが生えてくる頃には親は既にいない、というところから、「親知らず」と呼ばれるようになったそうです。
昔は加工食品はありませんでしたので、昔の人は硬いものをたくさん食べていました。逆に現代人は硬いものをあまり食べなくなって、柔らかいものが中心の食事になっています。そのため顎をしっかり動かして食事をする機会が少なくなってきた影響で、顎がほっそりとした輪郭に変わってきているといわれています。
顎が小さいために親知らずが生えてくる場所がなくなってしまって、現在では正常な状態で生えてくる人が少なく、そもそも生えてこない方もおられます。生える時期や大きさも様々です。
親知らずどころか、永久歯さえも先天的に数本生えてこないお子さんもおられます。
親知らずの色々な生え方
親知らずは正常に生えてくる方の方が少数派です。ほとんどの方は斜めになっていたり、一部が埋まっている状態だったり、中には歯茎の中に深く埋まったままで全く歯肉から歯が顔を出さないケースもあります。
また、親知らずが生えている方でも、上下左右の4本が全て生えてくるとは限りません。
親知らずの抜歯は保険適用ですか?
親知らずの抜歯にかかる料金は保険診療です。ただし、完全に歯茎に埋まっている場合や、横向きに生えている場合などは、当院での治療は出来ない場合があります。その場合には大学病院等の口腔外科に紹介状を書かせて頂きます。
親知らずのケアはどうすればいいの?
歯ブラシが届きにくいために虫歯や歯周病になりやすい親知らずですが、予防のためにセルフケアはしっかりと行い、お口の汚れや歯垢をましょう。ブラシの毛先をきちんと歯に届かせるコツがありますので、ご紹介します。
歯ブラシでのセルフケア
鏡を見ながら、親知らずにブラシの毛先がきちんと当たっているかどうかを確認しつつ、歯ブラシを小さく動かしながら親知らずとその周囲のデコボコした部分もきれいに磨きます。
タフトブラシでのセルフケア
タフトブラシは歯と歯の隙間が大きく窪んでいる場合など、通常の歯ブラシが届きにくい場所を磨くのに適しています。
鏡を見ながら、軽い力で歯と歯茎をマッサージするように動かします。力を入れすぎないように注意しましょう。歯磨き粉の泡で鏡が見づらい時は、歯磨き剤を使わずに水だけで磨いてもきれいになります。
上の親知らずは普通の鏡では見えませんので、ドラッグストアで小さなデンタルミラーを購入して、タフトブラシがきちんと歯に当たっているかを確認しながら歯みがきされることをおすすめします。
まとめ
親知らずの生え方には様々なケースがあり、必ずしも抜歯が必要なものではありません。ただし、親知らずの手前の歯(7番の大臼歯)に悪い影響を与える場合や、親知らず自身が深い虫歯になっている場合は抜歯することになります。