インプラント治療について「絶対にダメ」と主張する先生がおられ、そう主張されるには理由があります。インプラント治療が絶対にやめたほうがいいという意見がある理由についてご説明します。
インプラント治療を勧めない理由は?
インプラント治療に反対の立場の方にも、様々な理由があります。それらの理由は大きく分けると以下の3つに分類されます。
- 外科手術に関する問題
- 費用・期間に関する問題
- 治療後に関する問題
1.外科手術に関する問題
インプラント手術には外科手術が必要です。インプラント体を顎骨に埋め込むために、まず歯茎を切開し、骨に穴をあけなければなりません。
その手術は通常の虫歯治療等とは違いますので、身体への負担を考えると不安になられるのかもしれません。しかし、インプラント手術は虫歯治療と同じ局所麻酔で行いますし、身体への負担は歯を1本抜くのと同じ程度とよくいわれます。そのため、それほど心配する必要はありません。
1. 骨量不足
インプラント治療には十分な骨量が必要です。骨の厚みや高さが不足している場合、インプラントが安定しない可能性があります。このような場合、骨移植などの前処置が必要になることがありますが、それでも骨が十分に回復しない場合はインプラントが推奨されないことがあります。
2. 全身的な健康状態
糖尿病、心臓病、免疫疾患などの全身的な健康状態がインプラント治療に影響を与えることがあります。これらの疾患は、治癒を遅らせたり、感染リスクを高めたりするため、インプラント治療の成功率が低下する可能性があります。そのため、健康状態が不安定な患者さんにはインプラントが推奨されないことがあります。
3. 喫煙習慣
喫煙はインプラント治療の成功率が低く、インプラントの安定性が損なわれるリスクが高い要因になります。タバコに含まれる有害成分は血流を減少させ、骨の再生を妨げるため、インプラントの治癒過程に悪影響を与えることがあります。そのため、喫煙者の方には他の治療法が勧められることがあります。
4. 口腔内の感染症や歯周病
歯周病や他の口腔内の感染症がある場合、まずそれらを治療しなければなりません。これらの感染症が治癒していない場合、インプラントが感染するリスクが高くなります。特に歯周病はインプラントの周囲の骨を破壊し、インプラントが失敗する可能性を高めます。
5. 年齢や心理的な要因
インプラント治療は、高齢の方や心理的に不安を感じる患者さんには慎重に行われるべきです。特に高齢者の場合、手術自体が体力的に負担になる可能性があるため、他の治療法が適している場合があります。また、手術に対する恐怖心が強い患者さんには、インプラント以外の方法が推奨されることがあります。
6. 適応症が限られている場合
インプラント治療は万能ではなく、すべての患者さんやケースに適しているわけではありません。例えば、特定の咬合(噛み合わせ)の問題や顎の構造が複雑な場合には、他の治療法が推奨されることがあります。
2.費用・期間に関する問題
インプラントは自由診療で保険がきかないため、高額の治療費が必要になります。1本のインプラントをお口に入れるためには40~50万円程度かかりますので、決して安いとはいえません。
治療費が高いことを理由に、インプラントはお勧め出来ないとおっしゃる方もおられますが、外科手術が必要で、技術と経験を持った歯科医師がオペを行うため、一般的な虫歯治療等よりも費用がかかります。
3.治療後に関する問題
インプラントは歯周病に弱いため、インプラント治療後には必ずメンテナンスを受けて歯周病予防を続ける必要があります。もちろん毎日のセルフケアも手を抜かずにしっかりと歯磨きを行わなければなりません。
しかしこれはインプラントに限ったことではなく、天然歯を長く維持するためにも、歯科医院でのメンテナンスとセルフケアは必須です。
また、インプラントは一生もつわけではないということも、インプラントをおすすめしない理由として良く聞かれます。歯科には様々な治療法がありますが、虫歯治療の詰め物・被せ物にしてもブリッジにしても、一生もつというものではありません。
インプラントは高額な治療なので一生もつものと思われるかもしれませんが、天然歯と同じく、メンテナンスやケアを続けて、いかに長くもたせるかということが大切です。
安心してインプラント治療を受けるためには?
インプラントは絶対にダメだとおっしゃる方のお考えは理解できる点もありますが、誤解に基づいている主張もあります。
そこで、インプラントの特徴に触れておきたいと思います。
1.インプラントがダメになることがある
インプラントにも寿命があります。寿命と表現するのは正しくないかもしれませんが、インプラント周囲炎が悪化すると、インプラントは骨から抜け落ちてしまいます。
2.インプラントは入れ歯よりも良く噛める
歯を失った場合の治療には、「見た目の回復」と「噛む機能の回復」という2つの条件を満たす必要があります。。
入れ歯と比べた場合、インプラントは噛む機能が優れていて、お口の中での違和感のない治療です。
3.インプラント治療の前にはCT検査が必須
安全なインプラント手術のためには、手術前にCT撮影をして骨の量や血管の位置を予め確認しておくことが大切です。骨が足りない場合は増骨の処置をし、血管を傷つけない位置へのインプラント体の埋入が必要です。
4.インプラント治療を受けられない病気があるので注意
患者さんに全身疾患がある場合、その数値によってはインプラント治療が出来ない場合があります。そのため、以下の病気のある方は、持病の主治医の先生に相談して、インプラント手術が可能かどうか判断してもらいましょう。
インプラント手術を受けるにあたって注意しなければならない代表的な病気は、心筋梗塞、狭心症、喘息、肝炎(ウイルス性を含む)、腎炎、糖尿病、骨粗鬆症、脳梗塞、関節リウマチ、金属アレルギー、うつ病、その他悪性腫瘍などです。
5.歯周病の方はインプラント治療の前に必ず治療しましょう
歯周病にかかっている方は、インプラント治療が失敗したり、早期にダメになる可能性があります。インプラント治療を受けることに決めたら、歯周病検査を受けましょう。
インプラントを勧めない場合の理由に関するQ&A
インプラント治療の前にはCT検査が必要です。骨の量や血管の位置を確認し、手術の安全性を確保するための準備が行われます。
インプラント周囲炎が悪化すると、インプラントが骨から抜け落ちてしまう可能性があります。また、全身疾患がある場合や歯周病が進行している場合には治療が制限されることがあります。
インプラント治療は、歯を失った方であっても顎骨が適切な状態であり、全身の疾患や歯周病が制限されない方に適しています。
まとめ
インプラントを勧めない方が懸念されているのは、①外科手術に関する問題 ②費用・期間に関する問題 ③治療後で、それぞれの問題点についてご説明しました。安全にインプラント治療を受けるためには、不明点を明らかにすることも必要です。