歯周病は様々な全身疾患に関係があるといわれていますが、近年の研究でインフルエンザとの関連性も明らかにされてきました。歯周病とインフルエンザの関係についてご説明します。
インフルエンザ予防の基本とは?
インフルエンザは毎年冬季に流行するウイルス性の感染症で、咳やくしゃみなどによる飛沫感染や接触感染が主な感染経路です。特に高齢者や子供、基礎疾患を持つ患者さんは、重症化するリスクが高いため、適切な予防が重要です。
インフルエンザ予防の基本は、以下の3つです。
- ワクチン接種
- うがい・手洗い
- 健康的な生活習慣の維持
ワクチンは予防の一環として重要ですが、日常的な習慣である「うがい」「手洗い」「歯磨き」も、感染予防に大きな効果を発揮します。
1. うがいの効果と正しい方法
うがいは、口内やのどに付着したウイルスや細菌を洗い流すことができるため、インフルエンザ予防の手段として効果的です。特に外出から帰宅した際や人混みにいた後にうがいをすることで、感染リスクを低減することができます。
正しいうがいの方法
- 水でうがい:外出後すぐに口をすすぎ、のどの粘膜に付着したウイルスを除去します。
- 流水でうがいを3回以上行うことが推奨されています。
- うがい薬を使用する場合は、説明書に従って希釈し、口内の隅々まで行き渡らせるように注意します。
うがいのポイント
- うがいはこまめに行うことが重要です。
- ウイルスが付着してから早めに流すことで、感染リスクを大幅に下げることが期待されます。
2. 手洗いがもたらす効果と正しい手順
手洗いはインフルエンザ予防の中でも最も基本的かつ効果的な方法です。ウイルスは手を通じて目や鼻、口に運ばれやすいため、手洗いを徹底することで感染経路を断つことが可能です。
正しい手洗いの手順
- まず流水で手を濡らします。
- 石鹸を手に取り、手のひら、手の甲、指の間、爪の間、親指、手首をしっかりとこすります。
- 少なくとも20秒以上かけて洗うことが推奨されており、感染リスクを効果的に減少させることができます。
- 最後に流水でしっかりと洗い流し、清潔なタオルまたは使い捨てペーパータオルで拭きます。
手洗いの重要性
- ウイルスは目には見えないため、日常生活の中で手に付着しやすいです。
- ドアノブや電車のつり革、スマートフォンなど、触れる機会の多いものを介してウイルスが広がります。
歯磨きがインフルエンザ予防に役立つ理由
歯磨きは、口腔内の清潔を保つためだけでなく、インフルエンザ予防にもつながるということをご存知でしょうか。口腔内の歯垢や細菌がウイルスの増殖を助ける可能性があるため、歯磨きを適切に行うことで、感染リスクを軽減することが期待できます。
歯磨きがもたらす効果
- 口腔内の歯垢や食べかすを除去することで、細菌の繁殖を防ぎます。
- 歯垢が蓄積すると、口腔内が酸性に傾きやすくなり、ウイルスが付着しやすい環境が整ってしまいます。
- こまめな歯磨きにより、ウイルスが体内に侵入するのを防ぐことができると考えられています。
また、歯磨きだけでなく、口腔ケア全般(デンタルフロスやマウスウォッシュの併用)も予防に役立つと言われています。
ウイルス感染予防のための歯磨きなどの注意
インフルエンザは感染者が咳やくしゃみ、会話などによってウイルスを周囲に飛び散らせてしまい、他者がそのウイルスを吸い込むことで感染します。
歯磨き中の唾液にもウイルスがいますので、他者の唾液に触れないことも重要です。会社の洗面所などで複数名で食後の歯磨きをする際には、なるべく換気を良くして、他の人と歯磨きをする時間をずらすなどの工夫をしましょう。
また、ウイルス感染症は家庭内で感染することも多いため、食器の使いまわしを避け、洗面・歯みがき時のタオルを一人ひとり分けるなど注意しましょう。
歯磨きの習慣化による全身の健康への影響
インフルエンザ予防における歯磨きの効果は、口腔内の健康を保つだけではありません。口腔内の細菌は全身の健康にも影響を与えることが知られており、特に高齢の患者さんや基礎疾患を持つ患者さんにとって、歯磨き習慣の徹底は重要です。
口腔ケアが全身の健康に与える影響
- 歯垢の蓄積を防ぐことで、肺炎などの呼吸器感染症のリスクが軽減されます。
- 歯磨きが不十分だと、歯垢内の細菌が気道に侵入し、感染症を引き起こすことがあります。
- 定期的な歯磨きは、糖尿病や心血管疾患などの全身疾患の管理にも役立ちます。
歯磨きは単なる口腔ケアではなく、全身の健康を守るための大切な日常習慣なのです。
歯周病菌はインフルエンザウイルスを活性化させる
インフルエンザウイルスが体内に入り、粘膜にくっつくと、ウイルスの表面にあるヘマグルチニン(HA)という酵素が鍵のような役割を果たして細胞膜の中に入り込みます。
HAによって細胞内に入り込んだウイルスが増殖すると、ノイラミンダーゼ(NA)と呼ばれる酵素が細胞壁を破って、感染を拡大していきます。
歯周病菌はこのHAとNAを活性化させるため、お口の中に歯周病菌が多く存在している人は、HAとNAが活性化しており、インフルエンザを発症しやすくなります。
歯磨きで歯周病予防をすることがインフルエンザ予防にも繋がる
今後は、うがいや手洗いなどのインフルエンザ予防対策に歯磨きも加えましょう。うがいだけでは歯に付いた歯垢を取り除くことは出来ませんが、歯ブラシに加えてデンタルフロスや歯間ブラシを使うことで、歯と歯の間や歯と歯茎の間の歯垢もきれいに落とすことが出来ます。
まとめ
インフルエンザ予防には手洗いとうがいが効果的です。それ以外に歯磨きで歯周病予防をすることをお勧めします。
歯垢の中にいる歯周病菌が出す毒素は、歯茎に炎症を起こして組織を破壊していきますが、歯茎だけでなく気道粘膜にも炎症を起こします。気道粘膜が炎症を起こすと、インフルエンザウイルスが体内に侵入しやすくなってしまいます。
それを防ぐため、毎日丁寧に歯をブラッシングして歯垢を出来るだ除去し、お口の中の細菌を減らしましょう。