大人は子供よりも虫歯になりにくいというイメージがありますが、高齢者になると虫歯になりやすくなってきます。その理由や対策についてご説明します。
高齢者は虫歯になりやすい。その理由は?
高齢者の方が虫歯になりやすいといわれるのには理由があります。
歯周病によって歯の根元の象牙質が露出してしまう
高齢者によくみられる虫歯として、歯と歯茎の境目部分の歯の根に出来る根面う蝕(こんめんうしょく)があります。
根面う蝕は、本来歯茎に覆われている歯の根元の部分が、歯周病による歯茎の退縮や加齢などによって露出してしまい、その部分が虫歯になるというものです。歯茎から上の部分の歯は硬いエナメル質で覆われていますが、歯茎の下の部分は軟らかく、虫歯になりやすく、一度虫歯になったら進行しやすいという特徴があります。
根面う蝕は今まで虫歯になったことのない歯に起こることもありますし、被せ物をした歯の根元に起こることもあります。
歯茎が退縮していって歯が長くなったように見える方は、根面う蝕や知覚過敏のリスクが高まりますので、必ず歯科医院の定期健診を受けて虫歯のチェックをするようにしましょう。
唾液の分泌量の減少
高齢者は唾液が減少してドライマウスになっている方が多いです。その理由としては、加齢によってお口周りの筋肉が衰えてきて、あまり動かさなくなったこと、ストレスや持病の薬の影響で唾液の分泌が減ったことなどが考えられます。
唾液が少なくなると、お口の中の食べカスを洗い流したり、脱灰した状態の初期虫歯を再石灰化する作用が追い付かなかったりと、良いことがありません。
軽く唾液腺のマッサージをすることで、唾液の分泌を促すことが出来ますので、時々耳の下あたりや顎の下をそっとマッサージしてみましょう。
詰め物・被せ物の下で二次虫歯が起こる
二次虫歯(二次カリエス)は、治療を行った部位に発生する虫歯で、詰め物や被せ物を外して虫歯の部分を削り取り、再度詰め物・被せ物で治療します。二次虫歯では前回の治療よりも治療の範囲が大きくなりますので、前回よりも大きい詰め物や被せ物で治療することになります。
特に保険適用の銀歯の場合、接着剤の経年劣化や材質の特徴として、歯と詰め物・被せ物の間に隙間が出来やすく、そこから虫歯菌が中に侵入して二次虫歯を起こしやすくなります。
また、神経を取って治療した歯が二次虫歯になった場合は、痛みを感じないためにかなり虫歯が進行してからの発見となることが多く、抜歯が必要になるリスクが高くなります。大切な歯を失わないために虫歯予防を徹底しましょう。、
加齢によるエナメル質の減少
加齢によって歯のエナメル質がすり減る傾向があります。エナメル質が薄くなると、酸によって歯が溶けやすくなり、虫歯になりやすい状態になります。食いしばりや歯ぎしりによっても歯はすり減ります。
虫歯菌は誰もがもっている常在菌
日本人のおよそ90%は、虫歯になったことがあるといわれています。虫歯は、お口の中のミュータンス菌と呼ばれる虫歯菌が、食事から摂れた糖分をエサにして、乳酸を出します。乳酸は歯を溶かし、それが虫歯の発生です。
では、すべてのミュータンス菌を排除すればいい!と思うところですが、人は口の中だけではなく体中に常在菌を持って生活しています。菌の中には悪い菌とたたかって、体の健康を維持してくれる良い菌も存在します。そうして私たちの健康は成り立っているため、常在菌であるミュータンス菌だけを排除することは難しく、ミュータンス菌を増殖させないための日々のブラッシングや定期健診がとても重要になってきます。
二次虫歯を予防するにはどうしたらいいの?
虫歯は細菌による感染症です。虫歯を引き起こす原因菌であるミュータンス菌などのことを総括して虫歯菌と呼びますが、それらの細菌がお口の中で増殖して、虫歯菌の出す酸で歯が溶けてしまうのが虫歯です。
虫歯になった部分を削って詰め物や被せ物をしても、お口の中に虫歯菌がたくさんいる状態では、また別の場所が、虫歯になってしまいます。
そのため、虫歯予防としては、お口の中の虫歯菌を減らすことが重要です。
具体的には、毎日の歯磨きなどのセルフケアをていねいに行うことで、虫歯菌の塊である歯垢をなるべく除去したうえで、年に2~4回程度の歯医者の定期健診で歯垢や歯石を専用の器械で取り除きます。
歯石の中にも細菌がたくさんいますので、歯石も必ずきれいに取ってしまわなくてはいけません。
特に、一度治療した詰め物や被せ物と天然歯の間の段差の部分は、ていねいにブラッシングして歯垢がたまらないように気をつけます。歯と歯の間や歯と歯茎の間の食べカスや歯垢は、デンタルフロスや歯間ブラシを使えばかなりきれいに取れます。
また、フッ素は歯質を強化して虫歯が出来にくくする効果がありますので、歯磨き剤や洗口剤にフッ素入りのものを使うと虫歯予防に繋がります。
高齢者の虫歯のなりやすさに関するQ&A
高齢者は歯周病によって歯の根元の象牙質が露出し、根面う蝕と呼ばれる虫歯が発生しやすくなります。また、唾液の分泌量が減少し、エナメル質の減少も高齢化とともに進みます。これらの要因が重なることで、高齢者は虫歯になりやすくなるのです。
高齢になって唾液の分泌量が減少すると、口内の清掃や再石灰化作用が十分に行われず、虫歯のリスクが高まります。また、食べカスを洗い流す機能や口内のpHを中和する効果が低下し、口腔内のバランスが崩れます。
二次虫歯は治療を行った部位に再び虫歯が発生することです。特に銀の被せ物(クラウン)では、接着剤の経年劣化や材質の特徴により、歯と詰め物・被せ物の間に隙間ができやすくなります。この隙間から虫歯菌が侵入し、二次虫歯が発生するリスクが高まります。
まとめ
高齢者が虫歯になりやすく進行も早いという理由の一つに、加齢による歯茎などの組織の衰えということがいえます。
歯ぐきが下がってきて歯の根元が歯茎の上に露出すると、どうしても知覚過敏が起こりやすくなり、虫歯にもなりやすいので、定期健診でのチェックが欠かせません。
噛めなくなると脳への刺激が少なくなり、認知症のリスクが高くなることも知られていますので、しっかりと噛める状態を維持するためにも、年に数回の歯の定期健診をおすすめします。